4X や Roguelike Deckbuilder には本当に機会があるのか?

インディーゲームのマーケティングに関する記事で、steamでは需要に対して供給が少ないRoguelike Deckbuilderや4Xゲームがチャンスではないかと書かれていた。

しばらくは自分もそれを鵜呑みにしていた。しかし、最近SteamDBを活用するようになり、ふとした拍子に上記記事に関連したことを調べていると、もしかしたらそこは天国ではなく地獄の可能性もあるなと思い至った。

結論を述べると、需要はあるけど供給が少ないからと言ってチャンスとは限らない。絶対王者の独占市場である可能性がある。

4X

例えば4Xゲームについて。確かに需要は多く、供給されるゲームは少ない。まるでブルーオーシャンに感じられる。

しかし実際にランキングを眺めると上位に存在するのは複数のCivilizationシリーズとTotalWarシリーズ、パラドックスのStellarisなどであることが分かる。少数のシリーズが上位独占している市場なのだ。

つまり消費者は既にこのジャンルにおける「答え」を手にしているのだ。そしてこのジャンルはやり込める。Civilizationで1000時間溶かした人もザラにいるのではないだろうか。

一つのソフトで長時間遊べるジャンルだからこそ4Xは人気であり、ゆえに勝者と敗者が明確に分かれる。その兆候として、4Xは人気ジャンルでありながら同時接続者数のリストが100に到達しない。一部の上位ゲームが需要を飲み込んでいることを示している。このような特性と状況を無視して機会があるとは素直に言えないのではないか。

検索市場

この状況に近い例として検索市場が挙げられる。検索市場は巨大だが「供給者が限りなく少ないからチャンスがある」などと言う人は少ないだろう。

大半の消費者はGoogle以外の選択肢を積極的に探すほど検索に困っていない。検索市場の答えはGoogleでほぼ確定しており、ここに戦いを挑んだ者の殆どは敗北している(Microsoftですら)。

4Xゲームの現状はこれに近いと思っている。

Roguelike Deckbuilder

RogueLike DeckBuilderに関しては4Xとは別の課題があった。このジャンルはSlay the Spireだけが上位に相応しい同時接続者数を叩き出している。トップ以下にはSlay the Spireに肩を並べられるゲームは存在しない。

まだ供給が少ないからとも考えられるが、自分は少し怪しいと思っている。本当にジャンル自体に需要があるのなら、トップ以外のゲームにもユーザーが流れるはずなのだ。

Vampire Survivors以降隆盛を極めるAction Rogue-likeを見てほしい。様々なVSライクのゲームにユーザーが流れ込んでいるのがわかる。これと同じ現象がRoguelike Deckbuilderには起きていない。

このジャンルで見えたチャンスは、偽物である可能性がある。受け入れられたのはあくまでもSlay the Spireという出色のゲームであり、Roguelike Deckbuilderというジャンルではなかったのかもしれない。

まとめ

  • 需要があって供給が少ない、即ちビジネチャンスがあると決めつけない。よく調べるとより険しい状況を表している可能性がある。
    • 恐ろしい独占的強者の存在を示す可能性(4X)
    • 統計に外れ値が混ざりジャンルの実態から上振れしている可能性(Roguelike Deckbuilder)
  • 権威の言葉を鵜呑みにしない。特にビジネスでは。最後は自分で調べて判断する必要がある。

4Xでイノベーションを起こすことは可能だ。Roguelike Deckbuilderでも同じことが言える。しかしそれは楽な道では無いことを心に刻もう。「需要があるから売れるはずだ」などと安易に判断しないことだ。